物語のロケーションガイド

青亀とうり坊の川

 スクナが降り立った川には青亀がいました。

 古代、神武天皇の東征で道案内をした神に出会った場所として、有力な候補が明石海峡とされており、その神が青亀に乗ってたどり着いた浜を古くは「青亀(あふぎ)」と言い、転じて「青木」になったとされています。

 その青木のある場所は

青木マップ

 赤い線で囲んだあたりです。海寄りの、最後の道路より南は埋立地で、神戸市は「山、海へ行く」を標語に昭和期には山を削ってそこに住宅地を造り、出た土でたくさんの埋立地ができました。このあたりも六甲山系の土で拡張されたのです。

青木のまち

 阪神電車の青木駅の南側一帯です。真ん中を幹線道路の国道43号線が走っています。この道路ができる前は、このあたりのほうが今のJRや阪急電車の沿線沿いよりもずっと栄えていたそうです。今は逆になっています。

 浜には1999年までフェリーの発着場もありましたが、現在はショッピングセンターの「サンシャインワーフ神戸」ができました。中には近隣では最大級のダイソーがあり、他にもオートバックスやマクドナルド、ヤマダ電機などが入っていて、海を見ながらショッピングや食事ができる場所になっています。

「サンシャインワーフ神戸」公式サイト

天上川

 青亀のいた川として推定できるのは、付近を流れる川のうち、青木に最も近い「天上川」だと思われます(東=右側の青いライン)。住宅地を蛇行しながら北の六甲山へと進めば、祀られている「保久良神社」の近くまで遡行できます。

 ただし、この川は大雨でも降らないかぎり年間を通じてほとんど水がなく、とても亀が泳げるようには見えません。

昔は本当に「天井川」(川底が頭上にある川)だったものを付替えされた経緯があり、その前はもう少し広めの川だったのかもしれません。

うり坊の川として

 この川にオオナが降り立ったときにはうり坊がいました。

うり坊

 天上川はイノシシが出没する川として、特に春になると生まれたばかりのうり坊が見られるというので、多くの見物客が橋の上から写真を撮る姿が見られました。

 水量が少なくてイノシシは動き回れますし、堤防はある程度深さがあるので安心して観察することができて、さながらイノシシ動物園のようになっていました。

天井川

イノシシの親子(2015年)

 しかし、イノシシにとっては不自然な環境だと警鐘が鳴らされ、見かけても餌付をやらないよう注意喚起されるようになります。

参考(PDF):「六甲山におけるイノシシ管理の現状と課題」横山真弓、2016年

 それでもエサをあげてしまう人が後を絶たず、上流のほうでイノシシが人を襲う事件が相次いで、市も本格的に駆除に乗り出しました。その成果が上がり、最近ではイノシシファミリーを見かけることはほとんどなくなりました。

住吉川

 その西側にある「住吉川」は、川幅があり水量も豊富なので、こちらのほうが亀が泳いて遡上するイメージができます。川沿いを歩いてジョギングしたりすることもでき、地域での存在感は天上川より格段に高いです。

住吉川上流

上流付近

 川の両岸には、神戸新聞の記事によると、明治から戦前にかけては大邸宅が立ち並び富豪たちの社交場もあったそうです。現在でも近隣随一の高級マンションがあり、有名人が住んで話題になります。

 かつての片鱗がうかがえるのが、谷崎潤一郎記念館となっている「倚松庵」。1980年代に開発された人工島「六甲アイランド」のための「六甲ライナー」を住吉川の上に通す案が持ち上がり、せっかくの景観が台無しになると反対運動がありました。線路は川の真上より西側に建造され、少しは景観が守られたようですが、その際に「倚松庵」は北へ150メートルほど移転されました。

倚松庵

「倚松庵」 公式サイト

 また、上流にはうはら酒造のモデルのひとつ「白鶴酒造」さんの美術館もあり、私設美術館としては日本最大級。昭和初期の七代目嘉納治兵衛のコレクションが展示され、灘の酒蔵の全盛期を感じさせる場所になっています。

白鶴美術館

白鶴美術館公式サイト

灘の酒造家の半世紀に渡る歴史に興味がある方は、「酒造家たちのファミリーヒストリー」もどうぞ。

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